

2024年4月
医療安全管理と医薬品安全使用のための研修
2024年4月29日


今回は薬剤師、医療事務、本社スタッフ、合わせて総勢75名と大勢が参加しての研修となりました。
まず全体研修として、感染症・災害の発生時における医療提供、オンライン服薬指導、医療DXへの取り組み等、連携強化加算の要件を満たすための研修を実施し、その後薬剤師と医療事務に分かれてそれぞれ必要な研修を行いました。
【第一部】
◆はじめの言葉 会社の方針
鈴木社長
今日は75名の社員に集まっていただきました。このように皆さんのお顔を拝見することができて本当にうれしく思います。本日の研修で学んだこと、実行すべきことは必ず薬局内に持ち帰って共有し、明日から実行してください。そして6月1日の診療報酬改定を迎えましょう。
薬剤師が対物業務から対人業務へ集中するためには医療事務との“協働”が欠かせません。ピッキングや発注作業等の業務的に重要だが、薬学的専門性を必要としないものは積極的に医療事務に移管してください。医療事務は“この算定加算できますか?”“この薬は不動品になっていますが返品しますか?”等、薬剤師に気づいた点を伝え薬剤師の背中を押してあげてください。薬剤師と医療事務の関係は薬剤師が指示を出す上下関係ではなく、二人三脚の関係で業務を遂行していってください。お互いに感謝、尊敬の念を持ち患者様に質の高い医療サービスを提供できるように“協働”していきましょう。
ー連携強化加算関連研修ー
◆感染症・災害の発生時における医療提供
コスモ調剤薬局 鎌田
新型コロナウイルス感染症が5類に移行されてから間もなく1年ですが、発生当時の医療現場の混乱は記憶に新しいところです。また、元日には能登半島地震が発生し、甚大な被害をもたらしました。感染症・災害発生時における医療の提供にあたってどのようなことが必要なのか、研修・訓練の実施と共に手順書も作成し全店舗で共有を行いました。
◆オンライン服薬指導
情報管理室 木村
ファックス等による処方箋の応需からオンライン服薬指導、お薬の配送・会計までの一連の流れ、本人確認や処方内容によるオンライン服薬指導の可否の判断、プライバシーの配慮やセキュリティ等の注意事項まで説明がありました。感染症流行時には非接触での対応、災害時では遠隔地への医療の提供としてオンラインによる診療や服薬指導は非常に重要なツールとなっております。
◆医療DX
経営推進部 川添
オンライン資格確認や電子処方箋等ここ数年で薬局におけるDXも進んでおりますが、ここでは特にマイナ保険証を取り上げました。マイナ保険証の利用率は未だ数%と低く、利用率をあげることが国策となっています。薬剤情報や特定健診情報の共有などが迅速に行えるなど患者さんへの大きなメリットがあります。過去にはお薬手帳や後発医薬品の促進など、最初は慣れなくても現在では当たり前に浸透している制度がありました。マイナ保険証もそれらと同じく今後薬局業務の常識になっていくでしょう。私たちはその変化にいち早く対応していく必要があります。
【第二部】
ー令和6年度診療報酬改定への対策ー
薬剤師の部では、本年度診療報酬改定の新設項目についてと、地域支援体制加算の項目のうち当社の取り組みが遅れている項目に関して話し合いました。
◆テーマ1
新設項目への具体的な対策
・特定薬剤管理指導料1,3及び調剤後薬剤管理指導料等
情報管理室 木村
まず今回新設された上記加算について木村社員からレクチャーがありました。RMP資材を用いた服薬指導、選定療養対象薬剤の説明など特定薬剤管理指導料3の算定要件は複数あります。また調剤後薬剤管理指導料では条件を満たした慢性心不全も対象になり、在宅患者様への算定も可能と範囲が広がっているので十分に理解を深めることが大切です。ハイリスク薬が複数処方されていても今後は薬剤師が必要と認めたハイリスク薬について指導・薬歴記入を行えば算定可能です。算定ルールの理解、処方医との連携、算定対象患者の絞り込み、医療事務との連携をしっかりと行って6月からスムーズに対応できるようにしていきましょう。
◆テーマ2
地域支援体制加算 各項目への取り組み
・「服薬情報等提供料」及び「服用薬剤調整支援2」
安全管理担当 堀内
今回の診療報酬改定では地域支援体制加算2の条件が厳しくなりました。各項目の中で、当社の件数が伸び悩んでいるのは、服薬情報等提供と服用薬剤調整支援の二つです。
服薬情報の件数は、かかりつけ薬局としての機能が果たせているかどうかのバロメーターと言えます。今回の改定から単なる患者からの相談応需では情報提供とは認められなくなりました。医師やケアマネジャーに重要情報を提供出来ているかどうかが問われます。アドヒアランス低下とその原因、副作用歴や尿閉歴、併用禁忌薬の情報、緑内障や前立腺肥大などの禁忌合併症情報、検査値悪化の原因となる嗜好品・・・等々、我々が患者さんからお聞きした情報の中に、医師の診療に役立つ重要情報があることを見逃してはいないでしょうか。患者様のためになる情報提供なら躊躇せず行うべきです。情報提供先の医師との信頼関係の構築も重要です。近隣の先生方には足を運んで口頭で説明をさせて頂くようにしましょう。定期的に面会が出来ると効率的です。重要情報はいきなりファックスを送り付けるのではなく説明の電話をかけるなどのフォローも大事です。
服用薬剤調整支援は、特に加算2についての要件の理解が曖昧になっていると考えられます。減薬に至らなくても提案をきっかけに後に重複投薬が解消した事例が多かったから新設された加算です。「減薬に至らなくてもいい加算」、「提案するだけの楽な加算」と捉えて、無意味な提案を繰り返していてはこの加算自体が無くされてしまいます。達成するべきはポリファーマシーの解消であって、安易な加算の算定を目指すものではありません。複数の医療機関で薬が処方されている場合は、例えば、同効薬が重複しているケース、先に処方された薬剤の副作用の対処のために新たに処方薬が増えているケース(処方カスケード)。こういった場合の減薬提案に対して算定する加算であることをしっかり確認してください。他の加算で算定すべきケースを付け替えるようなことのないようにしましょう。
・「服用薬剤調整支援料」に必要な知識
東浦和店 瀬戸
調整支援によりポリファーマシーを解消するためにどんな知識が必要でしょうか。
まずは高齢者に対して処方メリットが少なく、継続することによって有害事象を引き起こす可能性がある医薬品(PIMs)について理解しなくてはなりません。抗コリン作用を引き起こすもの、薬剤性パーキソニズムを引き起こすもの、せん妄を引き起こすもの、また漫然と長期投与されているベンゾジアゼピン系やH2受容体拮抗薬に特に注意が必要です。
次に、どんな薬剤が漫然投与されやすいかを理解します。効果不明瞭のまま処方され続けている薬、そもそもどんな目的で処方されたのか患者さん自身も覚えていない薬、急性時に処方されたのがそのまま続いている薬などはないでしょうか。「副作用も少ない薬なのでこのままでいいか」と考えず、削減に繋がるように提案しましょう。
そして、処方カスケードに気が付けるようにならなければなりません。処方カスケードとは薬の副作用を新たな症状と勘違いして新しい処方をし、それを繰り返すことです。これに気づくことができ、その上流で原因となっている薬剤を削減できれば大きな減薬効果が期待できます。そのためには、PIMsをチェックし、服用薬剤の副作用・相互作用を確認し、新規薬剤が処方された際には服用中の薬剤に起因した症状ではないかしっかりと評価することが重要になります。
・「服用薬剤調整支援料」取り組み報告
コスモ調剤薬局 大塩
実際に服用薬剤調整支援1を算定した事例をご紹介いたします。私たちの薬局では薬剤師間で情報共有を行うために毎週薬局内カンファレンスを行っております。患者さんの検査値や薬剤変更理由、医師との相談内容等を共有しそのなかでポリファーマシーについても検討を行っております。実際の事例では尿酸値正常範囲内でのアロプリノール、血圧低めでのカンデサルタンの削減となりました。この場合でもいきなり2剤の削減を目指すのではなくまずは患者さんが食欲不振で服用困難な看取りの状態であること、介護士から減薬の相談を受けていることを医師に情報提供し、アロプリノールの削減提案を行いました。減薬提案をまず1剤でも行うことで医師の考えも変わりその後のカンデサルタンの減薬にもつながっていきました。このように薬局内で情報を共有し、医師に対しては加算ありきではなく必要な事項について積極的に提案、アプローチを続けていくことが大切です。
このあと、テーマ2に関する質疑応答、テーマ3として診療報酬改定全般に関する質疑応答、最後に安全研修で継続して行っている地域支援体制加算各項目に関するディスカッションを行い薬剤師対象の研修は終わりました。大きな診療報酬改定を迎えるにあたり充実した研修となりました。明日より早速各店舗にて研修で得られたことをスタッフ間で共有し、業務を実行していきたいと思います。
◆親睦会
研修終了後、立食形式による親睦会を開催しました。
新型コロナウイルス感染症発生から4年、本当に久しぶりに開催できた親睦会です。鈴木社長の「一人でも多くの人と顔を合わせ話かけてください」の声がけの通り、あちらこちらで談笑がはじまりスタッフ同士、絆を深めることができたと思います。

